『寄せの棋本戦術』(小暮克洋,1997)―隠れた良書

本の概要

 「本書はこの寄せに関して、第1章「詰め」・第2章「必死」・第3章「手筋」の3方向から光を当てた、画期的な戦術書なのです。」(裏表紙より抜粋)

優駿流の隠れた良書

 本書は詰め・必死・囲い崩しという寄せの基本要素を一冊にまとめた画期的な終盤本。それぞれについて12テーマずつ合計36テーマ取り上げられ、1つのテーマにつき4問解説している。章末問題では章ごとの復習問題が各テーマ8問ずつ出題される。(合計168問ということになる)
 どのテーマ図をとっても外すことのできない基本問題が多い。3つの要素を扱っている割には網羅性が高く充実度が高い。テーマ図選択が巧みだと思う。
 寄せというのは見たことのある形であっても少しの違いで手順が違ってくる。それを4問の中で表現している。有段者でも一瞬では解けない骨のある問題も多い。

 ひと通り寄せについて勉強した道場初段格の復習とステップアップを兼ねる良書だと思う。

 一つ残念なのは問題の横に解答が書いてあり、ブックマークなどで隠しながら読まなければならない所だ。191ページでこの充実度を思えばトレードオフなのだろうが…。玉に瑕。