憲法の思いを伝える―『あたらしい憲法のはなし』(文部省)

あたらしい憲法のはなし

あたらしい憲法のはなし

 0円だったので読んでみました。過去に文部省が作った教科書のようです。小学校か中学校で読まれていたのかな?平易な文で日本国憲法の意味や思いを記しています。

いま國を家にたとえると、ちょうど柱にあたるものが憲法です。もし憲法がなければ、國の中におゝぜいの人がいても、どうして國を治めてゆくかということがわかりません。それでどこの國でも、憲法をいちばん大事な規則として、これをたいせつに守ってゆくのです

 このような文体で憲法の解説が進んでいきます。平易な始まりですが、内閣や基本的人権、司法、地方自治、改正等々解説されています。

憲法とは、國でいちばん大事な規則、すなわち「最高法規」というもので、その中には、だいたい二つのことが記されています。その一つは、國の治めかた、國の仕事のやりかたをきめた規則です。もう一つは、國民のいちばん大事な権利、すなわち「基本的人権」をきめた規則です。

 憲法は国の治め方と国民の基本的人権について記されている。ものを書くときに見習いたいシンプルな見出しです。
 

前文というものは、二つのはたらきをするのです。その一つは、みなさんが憲法をよんで、その意味を知ろうとするときに、手びきになることです。つまりこんどの憲法は、この前文に記されたような考えからできたものですから、前文にある考えと、ちがったふうに考えてはならないということです。もう一つのはたらきは、これからさき、この憲法をかえるときに、この前文に記された考え方と、ちがうようなかえかたをしてはならないということです。

 憲法の前文とは結構重要なものらしく、ただのまえがきではないようです。前文の考え方をもってそれ以下の条文を読んでいかなければならないのですね。誰かがテレビで憲法9条憲法前文に反している!」と言っているのを聞いたことがあります。この発言には引用のような背景があったんですね。

ひとりの意見が、正しくすぐれていて、おゝぜいの意見がまちがっておとっていることもあります。しかし、そのはんたいのことがもっと多いでしょう。そこで、まずみんなが十分にじぶんの考えをはなしあったあとで、おゝぜいの意見で物事をきめてゆくのが、いちばんまちがいがないということになります。そうして、あとの人は、このおゝぜいの人の意見に、すなおにしたがってゆくのがよいのです。このなるべくおゝぜいの人の意見で、物事をきめてゆくことが、民主主義のやりかたです

 民主主義と多数決主義を区別している名文だと思う。与党にも野党にも声に出して読んで欲しい日本語。

憲法は、天皇陛下「象徴」としてゆくことにきめました。みなさんは、この象徴ということを、はっきり知らなければなりません。日の丸の國旗を見れば、日本の國をおもいだすでしょう。國旗が國の代わりになって、國をあらわすからです。みなさんの学校の記章を見れば、どこの学校の生徒かがわかるでしょう。記章が学校の代わりになって、学校をあらわすからです。いまこゝに何か眼に見えるものがあって、ほかの眼に見えないものの代わりになって、それをあらわすときに、これを「象徴」ということばでいいあらわすのです。こんどの憲法の第一條は、天皇陛下を「日本國の象徴」としているのです。つまり天皇陛下は、日本の國をあらわされるお方ということであります。  また憲法第一條は、天皇陛下を「日本國民統合の象徴」であるとも書いてあるのです。「統合」というのは「一つにまとまっている」ということです。つまり天皇陛下は、一つにまとまった日本國民の象徴でいらっしゃいます。これは、私たち日本國民ぜんたいの中心としておいでになるお方ということなのです。それで天皇陛下は、日本國民ぜんたいをあらわされるのです。

 私自身、未だに天皇は日本の象徴、ということに対して抽象的なイメージしか持てておりませんが、引用部分を読んで多少は理解が深まったと思います。


 何の気無しに読んでみたら結構感心することが多くて読んで良かったです。憲法に興味はあるけど教科書を捨てちゃった人は一回読んでみるといいと思います。kindle版なら0円なので。