確かに『知的複眼思考法』はスゴ本だった

常識、多様な視点

 タイトルの通り思考法・考え方を養う本。『知的複眼思考法』というのは勝手に要すると、「ひとつのモノの見方(常識)に固執せずに、様々な視点を行ったり来たりしながら問題を捉え、考えを巡らす」ということだと思う。


 例えば昨今の学校いじめ問題を考える場合、加害者側の生徒の性質を分析するというのは一つの方法だろう。被害者側の生徒の性質について分析するのも重要だ。また加害者、被害者以外の生徒や教室、教師など外部の環境が大きな要因になっているのかもしれない。
 様々な視点に立って考えを巡らし、どこに原因があるのか、もしくはすべての要因が絡み合っているのか。そうして物事を見ていくと一つの問題に対しても、それまでと違う課題や論点が見えてくる。


 「多様な視点」という考え方は本書の刊行時点よりは浸透してきてはいるだろうが、意識しないと人間はついつい一つの考え方・常識に流されてしまいがちだ。『知的複眼思考法』では多様な視点を獲得するためのツールを紹介している。


 第一章は批判的読書を指南する。著者の意見を単に飲み込むのではなく、批判的に、疑問を持って読むことにより複眼思考の基礎を固める。
 第二章では複眼思考的作文技術を紹介している。書くことは考えを厳密に構成する訓練となる。
 第三章は問いの立て方。一章二章で手に入れた複眼的な読み書きの技術を応用するために、問いの立て方が重要だ。
 第四章は関係論的な見方パラドクスなど複眼思考法を例示しながら解説している。


 大学一回生のときに読んでいれば、レポートや卒論など、もう少しマシなモノが書けたかも…と思った。今後の自分の読書や作文、そして考え方に影響を与えうるスゴ本であった。