なぜ『大阪都構想』は提案されたのか?を解説する
本稿では「『大阪都構想』がなぜ提案されることになったのか」という経緯の部分を解説する。大阪都制度自体の内容には軽く触れる程度にとどめる。
1. 都道府県と市区町村
まずは基本的なことから。日本に住んでいる私たちは必ずどこかの市区町村に住んでいるね。広島市とか千早赤阪村とか千代田区とかそんなのだね。こういう市区町村を基礎自治体といって、住民に近いサービスを提供したり事務処理をしたりするよ。例えば住民票の管理やゴミ処理、水道事業などがそうだね。
そんな市区町村を包む形で設置されているのが都道府県だね。これも皆知っての通り京都府、北海道、東京都、とかそういうやつ。都道府県は広域自治体と呼んで、市区町村をまたがる事業や市区町村ではできない事業、たとえば警察や都市開発計画などの仕事を担当している。
ここまでをまとめると
市区町村 = 住民に近い仕事を担当
都道府県 = 市区町村にできない広い区域での仕事を担当
という役割分担がみえてくるね。
2. 政令指定都市制度
この仕事の役割分担は原則的なものなんだけれども、原則があれば例外もあるんだ。それが政令指定都市制度というものなんだ。
この政令指定都市制度の概要はすなわち
(人口が)大きい市には都道府県が本来担当する分のお仕事(の一部)もできるようにしよう
ということなんだ。
横浜市(370万人)や大阪市(260万人)が代表的な政令指定都市だ。260万人というと広島県や京都府に匹敵する人口なんだ。
都道府県に匹敵するぐらいの人口があるから、都道府県のお仕事も任せられるんだね。
政令指定都市制度は市の権限と財源を拡大する反面、弊害もあるんだ。
3. 二重行政の問題 ―政令指定都市の弊害
大きな市が都道府県の一部の仕事を担当することになると、必ず二重行政の問題が議論されることになるんだ。
二重行政に対して「問題アリ」と認識するか、「問題ナシ、もしくは二重行政は存在しない」と認識するかが、大阪都構想への賛成、反対を分ける大きな一つの要因でもあるんだ。
二重行政とはすなわち、1つの地域・事業に対して行政主体が2つ存在する状態といえる。
水道事業が「大阪市」と「それ以外の市町村」という分かれた形で運営していることの非効率性や、都市開発(まちづくり)に関して大阪府知事と大阪市長の二人の指揮官がいることで、統一的・効率的な都市開発が遂行できない、といった点を二重行政の問題として都構想賛成派は指摘しているんだ。
4. 大阪都構想の提案
そんなわけで都構想賛成派は「大阪に二重行政は存在し、それは問題である」と思って『大阪都構想』をぶち上げたんだ。
大阪都構想の概要はすなわち
政令指定都市である大阪市を廃止する。そんで5つの特別区に分ける。
という感じ。
5. 反対派の主な主張
バランスをとるために反対派の主張もさらっと記しておくよ
前述したように、反対派は二重行政に対して「存在しない、または存在していても問題ナシ」というスタンスをとっているよ。
例えば体育館や図書館は府と市で二つあるけど、利用率が高ければ問題ないよね?だったり、大阪府と大阪市の対立は話し合いで解決できるよね?大阪市分割する意味ある?
といった感じだね。確かにこの意見はある程度正当性があるんだ。二重行政が本当に非効率なのかどうかはちゃんと見極めなければならない。
あとは「大阪市が政令指定都市でなくなるのは大阪市民、大阪府民にとって損」という意見もある。
政令指定都市である大阪市が持っていた権限を都道府県に返すわけだから市民にとってはもしかして損?とか、大阪市という地域に権限が集中していることによって大阪が発展している、という考え方があるんだ。
この意見にもある程度正当性があって、どのような範囲で都市計画を考えるのが最も効率的なのかはもっと考えなければならない。
あとは2015年5月17日に住民投票にかけられた「特別区設置協定書」(大阪都構想の設計図)の作りこみが甘いという批判もあるよ。最近ではこれが大きな批判の原因だね。
6. まとめ
都道府県と市区町村の役割分担
→政令指定都市という例外
→二重行政の認識の違い
→大阪都構想の賛否の違い
という流れだね。
今回はごく簡単に経緯の部分を説明したので細かいところはかなり省かれています。少しというか大幅に都構想賛成派よりの文章になってますので、大阪都構想自体の内容・問題にふれたい場合は各種書籍をあたってみるのが良いと思います。
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