行きつけの理容室での悲しい出来事

 馴染みの理容室に行けなくなってしまった出来事を吐き出します。

 小学生の頃から通っていた理容室でした。理容師さんは、袴田さんとオーナーの2人でした。袴田さんは袴田吉彦に似ています。オーナーは50過ぎですが、小奇麗な方です。

 小中学生の頃はオーナーにも切って頂いていたんですが、だんだん、まあなんというか、オーナーと私の相性が良くないということがわかってきました。人としては嫌いじゃないのですが、端的に言うと、オーナーに髪を切ってもらうとダサくなるんです。

 それがわかってきてから、専ら袴田さんに切ってもらうということが暗黙の了解となっていきました。

 ある日事件は起きてしまいます。
 髪が伸びてきたので理容室に行こうと思いました。袴田さんがお休みだとダメなので、先に電話で確認しておきました。自分の名前も伝えて、今から行っていいですか?と、半分は予約の意味で、半分は袴田さんがいるかどうかの確認をしました。
 問題が無さそうだったので、理容室に行きました。

 袴田さんは問題なく居らっしゃったのですが、先客がいたので待っていました。少し嫌な予感がしましたが、気のせいだと思い込みました。

 「おまたせいたしました」と私に声をかけてきたのはオーナーでした。

 ここからは私が全部悪いのですが、久しぶりにオーナーに切ってもらう不安感と不満感で、施術中ずっと鏡越しにオーナーをジト目で睨むという人として良くない行動をしてしまいました。しかしお金を払ってダサくされる理不尽感に耐えられなかったのです。

 施術が終わり、案の定フィットしない髪型にされたあと、お会計をしました。

 3785円でした。私はちょうど払いました。するとオーナーが
 「ごめんね、これ返す」と言って、35円を私の手に返してきました。
 なんだこの35円。なんだろうこの35円は。

 そんなこんなでその理容室には行けなくなってしまったのでした。

 電話でちゃんと指名しなかった、ジト目で睨んだ、私が一番悪いのですが、後味の悪い出来事でした。

悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)

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